#にゃんこ物語

足入り肉じゃが

厳しい書道の先生で知られている立川先生の家に、子猫がもらわれてきました。ソマリと黒猫の雑種でふかふかの毛糸玉みたいなトラコちゃん。娘さんがもらってきた猫なのに、その日から立川先生はトラコちゃんに夢中になって、晩酌のお刺身も分け合って食べる仲になったのです。

近所のノラ猫にとっては、人間に可愛がられている飼い猫はしゃくの種。トラコちゃん、トラコちゃんと可愛がられて、夕方には白身のお刺身なんか食べているので、ノラ猫たちはトラコちゃんの姿を見るだけでムカついて、意味もなく飛びかかるのでした。

ある日の夕方、立川先生が晩酌に肉じゃがでビールを飲んでいると、庭に出ていたトラコちゃんが大きなノラ猫に追われて「キャーッ」と言いながら駆け込んできました。トラコちゃんは恐怖のあまり、食卓を駆け抜けたのですが、そのとき立川先生の肉じゃがの鉢に足を突っ込んでいったのです。

「あーあ」と言って立川先生は肉じゃがを食べるのをやめました。

台所では、奥さんと娘さんが、「あんなに可愛い可愛いと言ってても、トラコの足が入った肉じゃがは食べないんだ」と言いながら、二人で笑い転げていたのでした。

(KIMI)