うちのクロは、爪だけはふつうの爪だけど、ヒゲも肉球も真っ黒の黒猫でした。
15 歳になった頃、じん臓が悪くなって、やせて何も食べられなくなって、よろよろして、外に出だがるので、出したらそれっきり帰ってきませんでした。それから大雨が降ったり、風の強い夜があったりして、音がするたび、ふとクロが帰った気がして戸を開けてみたりしたのですが、いつも空耳でした。
そうして十日がたった頃、ニャーという声がしたので、また空耳かなと思いながら戸を開けたら本当に帰ってきてたんです。おまけに、とても元気になっていて、ご飯もたくさん食べて、大きな声も出せるようになっていました。
近所の方によると「雨の日に土嚢の上にじーっと寝ているのを見た」とか。クロは絶食療法をしていたらしいのです。それからすっかり大食いになって、好物のカニかまもたくさん食べて、半年くらい生きてくれました。今でも、不思議なネコのクロちゃんとともに生きている気分です。
(恭子)