#にゃんこ物語

猫の四十九日

浅野さんは新聞記者の間で「伝説の人」なのです。

若いころ、暴力団の動きを探っていて組員につかまり、倉庫に閉じ込められて脅された、そのとき浅野さんの度胸の良さに組長が感心して「あんた勿体ねぇなぁ。組に入らないか」と、ずいぶん勧められたというのです。

酒は強いし、仕事はできるし、部下の面倒見はいい、ということで、浅野さんのまわりには男たちのグループができて、しょっちゅう一緒に飲んでいました。

そうそう、浅野さんは猫に弱いのでした。子どもがいなかったので、メス猫を子どもがわりに可愛がっていたのですが、その猫が十五歳で亡くなったのです。

ある日、飲み仲間のところへ「猫の四十九日をしますので、料亭○○へお集まりください」という、ご案内がきました。
「浅野さんも、やっと飲む気になったんだな」「それにしても料亭○○とは豪勢じゃねぇか」と、酒飲みたちはノドを鳴らして集まったのですが、座敷に入ってびっくり。浅野さん夫妻がシンミリとした顔で座っていて、奥さんは「みなさん、このたびうちの猫が……」と言ってハラハラと落涙。

ご馳走が運ばれ、お酒が出たものの、誰も笑うことができずにシーン。

あんときは慰めようがなかった。浅野伝説がまた一つ増えて、今に語りつがれています。

(もっちゃん)