#にゃんこ物語

妻子をやしなう猫

あるとき、シャム猫というのでしょうか、きれいな毛並みのハンサムな猫が庭にくるようになりました。

近所のうわさによると、某ホテルで仲居さんがこっそり飼っていたのだけれど、経営者に見つけられて、追い出されたのだそうです。
で、年の頃は四、五歳と見えるハンサムで貫録のある彼は、「ホテル猫」と呼ばれるノラ猫になりました。

彼はいつもうちの物干し台の階段に寝ていて、近づくと鋭く光る眼で私をじーっと見るのです。魚屋さんからもらった売れ残りの焼き魚などを皿に入れておくと、私が去った後、ゆうゆうとそれを食べます。
しばらくは、そういう関係が続いたのですが、ある日、彼は私を見て、ふっと目を細めました。つまり、微笑んだのですね。

以来、私のそばに寄ってきて「エサをください」と言うようになったのです。

なにしろハンサムなので、言われるたびに焼き魚を出していたのですが、あるとき見ると、彼は食べるふりをして、実は食べていないのでした。

なぜかしら? とヤジ馬根性から隠れて観察していると、彼はミャーとやさしく呼びました。するとアジサイのかげから子どもを三匹つれたメス猫があらわれて、みんなでお皿の焼き魚をガツガツ食べたのです。ホテル猫はその様子を満足そうに見守っていました。

それが、妻子をやしなうオス猫を見た最初でした。感動しましたよ、はい。

(KIMI)