ある日、クロ猫の子ども、それも生まれて二、三か月の小さな子どもがうちの庭にあらわれたのです。大人の猫たちを押しのけてエサ箱の中に入ってエサを食べる、たくましい女の子でした。
動物病院で病気はないと診断されたので、友だちのNさんにノラ猫ということは隠して、もらってもらいました。高齢のお母さんと二人暮らしのNさんちに行くと、クロ猫の子どもは「とってもお行儀がいいわ」と喜ばれました。ええーっ、ねこかぶりって本当なんだ、と私は感心したものです。さらにその子猫はクインちゃんと名付けられたとのこと。ええーっ、ノラ猫から女王さまに大出世、と私はまたまたびっくり。

それから十年くらいたって、Nさんから泣きながら電話がかかってきました。うれし泣きでした。一昨日、二階でパソコンに向かっていると、クインちゃんが下から上がってきて、しきりにニャーニャー鳴いたのだそうです。なんだか様子がおかしいので一階へ降りてみたら、お母さんが倒れていた、と。救急車で運ばれて入院したのだけれど、クインちゃんが知らせてくれたおかげで、脳梗塞だったけど助かったのよ、命の恩人よ、ということでした。
いやはや、クロ猫の子どもは、今やN家の命の恩人、にまで出世してしまったのです。なんとも、はや。
(KIMI)