#にゃんこ物語

「にゃん」の 3 年天下

ある日、長男が野球の練習の帰りに、グローブの中にメスの子ネコを入れてきました。それが「にゃん」です。顔や体に筆で書き散らしたような模様が入っていて、なかなか面白い毛色でした。 「にゃん」はいつも玄関で寝ている犬のコロが苦手らしく、顔を合わせないように二階の子ども部屋で暮らしていました。

ところが老犬になったコロが死んだとたん、二階から降りてきて、コロが寝ていた玄関の座布団にゆったりと座ったのです。いかにも「今日からわたしの天下よ」という感じでした。冷蔵庫の前にすわって「にゃーにゃー、ごはん」と、いばっていたのです。

それから 2、3 年が過ぎて、柴犬のコタローがやってきました。赤ちゃん犬のコタローに会ったとき、「にゃん」はものすごく驚いた目をして、ジーッとにらんだのですが、そのまま、また二階へ上がって二度と降りてこなくなりました。「にゃん」の天下は 3 年でした。 

(滝川)