
書店で偶然に見かけ、思わず手に取りました。本書は、中山裕次郎著 泣くな研修医シリーズ8作目となります。
作者の中山祐次郎さんは現役の外科医。1作目「泣くな研修医」が小説デビュー作にしてベストセラーとなり、2021年の4月期、テレビ朝日系列でドラマ化もされました。この当時、中山先生は、総合南東北病院の外科医長をされており、ウィークリーで取材させていただきました。
書店で本書を見つけた時、正直「もうシリーズ8作目まで出ているのか」と驚きました。取材時にも思いましたが、外科医という激務の中、どうやって小説を書く時間を捻出しているのか。ただただ頭が下がります。
今作では、外科医となった主人公・雨ちゃん先生こと雨野隆治が、震災後の福島で医療支援をしていた友人が不慮の事故で亡くなったことをきっかけに、自分は何もしないでいいのかと悩みます。そんな中、福島のとある病院が、院長の急逝により診療を続けられなくなったという知らせが入ります。亡き友の遺志を継ぐかのように「ならば俺が行く」と、外科医を辞め震災後の福島で地域医療の現場に飛び込む雨野先生。最先端の医療機器も十分なスタッフもいない環境で、患者のために何ができるのか。壁にぶつかりながら「命を救うとはどういうことか」に向き合う雨ちゃん先生の姿が描かれます。
中山先生自身、院長が急逝した広野町の高野病院で期間限定の院長を務めていたことがあり、その時の経験が本書に生かされているのだと思います。最後は、外科医に戻る決断をしていわきを離れる雨野先生。次はどこへ行くのかー。このシリーズはまだまだ続きそうなので、次回作も楽しみです。