ご主人を亡くして一人暮らしになったフジコさんは、五年ほど前から飼っている茶色の柴犬モモと一日じゅう一緒です。
フジコさんが畑に出るときは、モモは作業小屋にいるか、リードなしで農地を自由に動きまわっています。ある日、フジコさんが鎌を取りに作業小屋へ戻ると、大きな作業台の下でモモがぶるぶる震えていました。見ると鼻に噛み跡があって血が流れています。
あっ、マムシに噛まれたんだ、と直感したフジコさんは、どうしたらいいかわからないので、「モモ、死なないでよ」と言いながら、とりあえず町の動物病院まで車を走らせました。マムシに噛まれたら血清がいるというけど、もし動物病院に血清がなかったらどうしょう、どうしよう、と思いながら。
救急です、と走りこんだ動物病院で、「あ、大丈夫。犬は血清いらないんだよね」と先生から言われたとき、フジコさんはへなへなとその場にへたり込んだそうです。
大ピンチから一転して大安心へ。でも、マムシをなめたらいけません。モモの鼻には五年たった今も噛み跡が残っているのです。
(KIMI)