直美さんが飼っていたパピヨンの「まめ」は相当に変わった犬でした。血統書付きでやたら誇り高いらしく、飼い主の直美さんにまったく懐かないで、1 日に何回も歯をむき出して怒っていました。遊びに行った私も寝ているカゴをのぞき込んだだけでギャンギャン吠えられました。
ところが外づらはめちゃ良くて、散歩で寄っていたご近所のお金持ちの老夫婦のお宅では愛想をふりまいて「可愛い可愛い」と言われていました。そしてとうとう、まめは 10 歳になる頃、その老夫婦の家にもらわれていったのです。
老夫婦の家では死ぬほど可愛がられて、お世話になっているからと直美さんが上等のお肉を届けたら、後日のお礼が「上等のお肉、ありがとう。まめが喜んで食べました」とまさかの返答。そんな甘やかし放題、ぜいたく三昧に飼われたのに、まめは生活習慣病にもならずなんと 20 歳まで生きたのです。そしてペットの葬祭場で立派なお葬式をあげてもらったときは、老夫婦の親戚縁者が全員、黒の喪服で参列したそうです。
庶民の直美さんからプチブルの老夫婦へ、まめは自分で生活の向上をはかったんですね。すごッ。
(恭子)