うちは郊外の住宅地ですが、丘の上にオンドリを飼っている家があって、毎朝、とんでもなく早い時間にコッケコッコーと鳴くので、ご近所めいわくになっていました。
その家は、オンドリの他に、ウコッケイと、ときどき警察車両がお迎えにくる警察犬のシェパードを飼っていて、年をとった柴犬は放し飼いにしていました。柴犬はもう十五歳くらいになるおばあさんで、ご近所では「おばあちゃん」と呼ばれていました。
去年のある日、「おばあちゃん」が玄関に来て、ハァハァ言っているので「こんにちは、おばあちゃん。あんた、歯を磨かないとお口がくさいよ」と言って、おやつを上げたら帰ったのですが、ご近所で話したら、その日、「おばあちゃん」はご近所のおうちをみんな回って歩いたことがわかりました。
そして、翌る日、建材屋さんをしているというその一家は、隣町へ突然引っ越して行ったのです。「あれは、おばあちゃんだけがお別れにきたんだね」「人間は挨拶なしで、犬の方が礼儀正しいんだばい」と、ご近所で言われております。
(土井)