私が勤めていた幼稚園は、ニワトリ数十羽と犬を一匹飼っていました。日曜日には職員が交代で出勤し、ニワトリにエサをあげるというのが、決まりでした。
犬は園長先生が可愛がっている茶色の雑種で、ちょうど漫画の泥棒みたいに口の周りが真っ黒で、名前もゴン太といって、放し飼いにされていました。職員のみんなに愛想をふりまく、人づきあいのいい犬です。
ある日曜日、新任の私が当番だったのでニワトリのエサやりに行きました。すると、犬のゴン太が尻尾をふってきて、何かください、と言うのです。他の職員は犬のおやつを用意してくるのでしょう。
新任の私は何も持っていませんでした。近くには八百屋しかありません。でも、犬はキャベツを食べると誰かが言っていたのを思い出して、八百屋でキャベツを買って一枚お皿にのせてあげました。
ゴン太はちょっと考えてからキャベツを口にくわえました。そして、園庭の隅に運んでいき、穴を掘って埋めたのです。「あとで頂きますから」と。
(サナエ)