ナッキーが来た夏から一年たって、あちこちで花火大会が開かれる季節になりました。
ナッキーは花火の音が大嫌い。花火が上がるたびにぶるぶる震えているので、台所の板の間に入れてドアを閉めていたのですが、ある花火の夜、いつのまにかいなくなっていて大騒ぎになりました。
翌日から、保健所の人に問い合わせたり、クリーニング屋さんが見かけたという場所にかけつけたり、和菓子屋さんが白い犬を見たという川まで走ったり、ご近所の人たちまで巻き込んでナッキーを探すこと一か月。
「もう、どこにもいないんだ」とあきらめかけていたとき、ふと玄関を見ると網戸越しに何かがドサッと倒れこむようすが見えました。あわてて戸を開けるとガリガリにやせた灰色の犬が……。でもそれは間違いなくナッキーでした。「ナッキー!」と呼びかけると「ワン」と蚊のなくような声で返事をしました。
つらい一か月だったのでしょう。病院に連れていくと、栄養失調の上に円形脱毛症にかかっていると診断されました。
「女の子で冒険の旅に出る子はめずらしいね」と獣医さんに言われたけど、「いえ、こわくて逃げただけなんです」と私はナッキーにかわって答えました。
(カオルコ)