県立U高校のラグビー部は寮をもっていて、25 名の部員の半数が寮で暮らしています。
その寮にある日の夕方、白い紀州犬が入ってきました。きれいな雄犬で、おとなしくて、部員があげた芋カリントをおいしそうに食べました。「可愛いな。よし、お前を今日からラグビー部員にしよう」と誰かが言いだし、夕食のあと、みんなでポジションを決めました。「こいつ足が速くて頭よさげじゃん」「んなら、司令塔のスタンドオフだな」「ナンバー書こうぜ」と、背中にスタンドオフの 10 という数字をマジックペンでくっきり書きました。ついでにクレヨンしんちゃんの太い眉毛も描いたので、紀州犬はかなり笑える顔に。
それから 3 日後、近くに住むU高校の数学の先生が行方不明になった血統書付きの愛犬を探してラグビー部の寮へきました。
「那智!」わんわんわん!数学の先生は愛犬那智号をヒシと抱きしめて涙ぐみました。で、ラグビー部員には落書きのおとがめもなく、「 3 日間お世話になりました」と牛肉5キロが届けられたのでした。
(太田)