#わんこ物語

ジョン

アメリカにジョン・F・ケネディという有名な大統領がいた頃、日本にはジョンという名前の犬がたくさんいました。
ジョンは、たいてい雑種のオス犬でした。

友だちの森くんの家にも小学生のとき茶色の雑種のジョンがいて、森くんに尻尾をふってくるのだけれど、森くんはジョンを、うるさいとか、犬臭いとか言って、いつも冷たくしていました。頭をなでてやったことなんか、一度もなかったと思います。

小学校五年生のとき、森くんは発熱してノドが痛くて死にそうになり、お母さんに言ったら「○○医院へ行きなさい。もう五年生なんだから、一人で行けるでしょ」と言われてしまいました。どうしよう、一人で行けるだろうか。森くんは、家を出て歩きはじめたものの、街中の○○医院へ行って、何と言えばいいのか、考えると心細くて、心細くて……。

ところが、○○医院まできて、ふと後ろを振り返ると、なんとジョンがついてきていたのです。心配そうに見上げているジョン。森くんは風邪で枯れた声で「ジョン!」と言いました。ジョンはうれしそうに勢いよく尻尾をふっています。

森くんの目からポロポロッと涙がこぼれました。ジョン、ありがとう! これまで、冷たくして、ごめんな。

まさかの友は真の友。このとき以来、森くんとジョンは大の親友になったのだそうです。

(ミウラ)