テレビ局を定年退職したマサさんにとって、人生の伴侶と呼ぶべきは奥さんよりマルチーズのモナカ君だそうです。毛色がちょうどお菓子の最中みたいだから、モナカ。
寝るときも一緒だし、趣味の時計を分解していて指を切ったときも心から心配してくれたのはモナカだけだった、とマサさんは言うのです。
ある日、モナカ君を車の後部座席に乗せて、マサさんはスーパーへ。買い物をすませたら、犬の美容院でモナカのシャンプーといういつもの予定です。さて、買い物をすませて、車を発進させて、ふと後ろを確認すると、モナカがいない! マサさんは顔色も青ざめてスーパーへとって返しました。途中の道にもいない、スーパーの店内にも近くにもいない。どうしよう。そのとき美容院に予約していたことを思い出し、とりあえず予約を取り消そうと美容院へ。
「あら、お父さん、モナカ君がさっきから待ってますよ」
車に置いていかれたあと、モナカ君はまっすぐ美容院へ向かって走り、マサさんを待っていたのでした。どっと安心したマサさんは叫びました。
「モナカ、きみはえらい!」
(黒崎)