#わんこ物語

ありがとう

K子さんはもう四十年ちかく保護犬ばかり飼ってきました。「おまえ、そろそろ犬から感謝状もらってもいいぞ」とご主人から言われるほどです。

毎朝、閑静な住宅街を自転車で走り抜けて食品会社に働きに行っているのですが、八年前の冬、K子さんは寒い道をうろうろ歩いているシーズー犬を見かけました。翌日もまた、その犬がうろうろしています。捨てられたんじゃないか、と思うともう放っておけなくなって、三日目の夕方連れて帰りました。

やせて真っ黒に汚れたシーズーをペットサロンで洗ってもらって、男の子だったから「のび太」と命名。のび太は性格が可愛かったので、たちまち六人家族のアイドルになってしまいました。

K子さんに拾われてから八年間、孫のお友だちの小学生たちにも大人気で、みんなからおやつをもらう、本当に幸せな日々でした。

今年の一月、日曜日にK子さんが居間に座っていると、のび太がやってきて、K子さんの膝に片足を乗せて、じーっとやさしい目でK子さんを見上げたそうです。そして、ふっと息が切れて死んでしまいました。のび太の全身全霊を込めた「ありがとう」だったのです。

K子さんは「もう泣いで泣いで、涙が止まんねがった」と言います。保護犬の中でも特別可愛いのび太でしたから。

(KIMI)