中学校の頃の話。数学の西先生が教室へ入ってこようとするとき「西がきた、西がきた」と、ちゃらけた声をあげるのが、クラス一番のひょうきん者、飯田新平君でした。みんなもつられて笑っていますと、西先生は「君たち、西がきた(北)ってシャレたつもりだろうけど、まだまだだね。それを言うなら『東から西が北、南(みな見い)』と全部入れ込まなけりゃ面白くないよ」ニヤリと口元をひねって言いました。
「オレ、あのときから人生が決まったような気がする」と新平君は今、うめくように言います。西先生にダジャレで完敗して以来、新平君が努力したのは、いかにして人を笑わせるかの一点だけ。尊敬する人物は「どうもスイマセン」の林家三平、「カックン」の由利徹、生涯 200本の映画を撮って、そのすべてがドタバタ喜劇だった斎藤寅次郎監督の三人と、ナンセンスに徹底しています。
何ごとも茶番にしてシャレのめす生き方を貫いてきた新平君ですが、最近嬉しくて嬉しくてたまらない出来事があったといいます。行きつけのスナックで若い女の子から「飯田さんのお話って、八割が冗談で二割がウソって感じですね」と言われた、と。これこそ、茶番人生の文化勲章だぜ、と新平君は言っています。世の中には妙なことが嬉しい人もいるものですね。