京都東山にある浄土宗総本山・知恩院。その本堂伽藍・御影堂の大きさ、完璧な構造と荘厳さは、息を呑むほどです。しかしこの屋根裏の垂木の上には、なぜか一本の唐傘が今も残されている、それも完成時に故意に置かれたというのです。つまり、「完璧」の後には「崩壊」しかないので、傘一本を未完成の印として忘れ置いた、というのです。中世からの日本人の知恵・考え方ってすごいですね。完璧になってはいけない、ということを後世の私たちに教えてくれています。
さて、ここからは下世話でちょっと切ないお話。
若い頃、競輪にはまって、仲間七、八人と競輪場巡りのバクチ旅をしたことがあります。全国に五十か所あるレース場のうち、回ったのは半分くらい。ところが、仲間の二人、漫画家の横ちゃんと中小企業経営者の杉山さんは、それぞれ個人で全国完全踏破を目指したのです。三年後の春には杉山さんが熊本で、秋には横ちゃんが広島競輪場で、満願に達し、みんなで祝賀会を開いたものでした。
しかし、その半年後、なんと二人とも五十代後半の若さで亡くなってしまったのです。仲間たちはア然、ボー然、真っ青になりました。古人の言うことは正しい。「満つれば欠ける」がこの世の習いなんですねぇ。