書初め

呑み仲間とよく行く店に川江屋というヤキトリ屋があります。小太りで無口な親父が炭火の焼き台の前に立ち、店内は奥さんが仕切って、客にビールなど注いでいます。

正月明けにいつもの仲間とこの店に行くと、壁に二枚の書初めが貼ってありました。「子どもが学校の書初め大会で金と銀の賞をもらったんで」と親父がニコニコ顔です。小学六年生の坊主が金、四年生の妹が銀をもらっています。近所のお習字教室に通わせた成果が出たとのことでした。
文字は六年生が「希望の朝」、四年生が「立春」です。
ヤキトリとビールを待ちながら、書初めを眺めるチョイ悪の仲間たち。すると、冗談好きな後藤さんが書初めの前に立って、なにやらゴソゴソやっています。席にもどってきて、ニヤニヤ笑っているのでよく見ると、「立春」の紙を二つに折って、「立」だけにして、「希望の朝」の下に貼り付けたのです。
「希望の朝」「立」。親父が見たら怒るだろうな。