揚げもの屋

昭和 30 年代の公立中学校の思い出は、まず、昼メシです。小学校ではみんな給食を食べていたのに、中学に入ったら弁当を持ってくることになって、貧富の差が歴然。なかには弁当を持ってこられない子もいましたし、親が忙しくて梅干しとご飯だけの子もいました。貧しいお弁当の子は、中身をフタでかくして食べたりして、何だか、ちょっぴり悲しい雰囲気でした。

そんなとき、学校の裏門の近くに「揚げもの屋」ができました。普通の住宅の玄関を店にして、縦長の板看板には、
「カツレツ、コロッケ、オムレツ、ポテト、肉のカキアゲ、そののフライ」
と書いてありました。

親から五円、十円をもらった中学生たちは、この店でよくおかずを買ったものです。私もその一人で、コロッケなど買いながら、板看板に書かれた「その他のフライ」がいつも気になっていました。何を揚げているのだろう? でも、だれも食べていないので正体不明でした。

クラスのワルもこの看板が気になっていたらしく、片隅でいじけているような子を「あいつ、その他のフライだな」とか言っていました。イジメは良くないけど、比喩は笑っちゃいましたね!!