ワンチャ売り

今回も遠い昔のお話。お祭り、縁日に出ていたワンチャ(茶碗ちゃわん)たたき売りの口上です。子どもの頃、人混みの片隅に二時間も座って聞いていたおぼえがあります。

金波銀波きんぱぎんばに輝く猪苗代湖いなわしろこ布引山うえ十八ちょう、トントンとハイヒール爪先つまさき下ります一丁目、着いた所が安積町、ご参詣の皆様で賑わうこの安積國造神社あさかくにつこじんじゃのご縁日、境内お借りしてあきないさせてもらいます。」

『男はつらいよ』の寅さんの声は聞けなくなりましたが、ダボシャツ、腹巻きのテキヤ(香具師やし)のたたき売りです。

「さぁてお立合い、あたしが持ってるこの茶碗、どうです、姿形すがたかたちひんもいい。この品物が三越さんから四越よつこしさん、白木屋さんから赤木屋さんまで、どのデパートさんに行っても、きちんとケースに収まると三千円からする名器ですよ。それを本日はご縁日の大特売、思い切って半値の千五百円! え?高い? ようし、と。そんならこれに小鉢と小皿を合わせて三点セットで千二百円! ダメか、わかった、男は度胸、女は愛嬌あいきょう、坊主はお経でおかずはラッキョウ。清水の舞台から飛び降りたつもりで八百円」と、どんどんマケていき、「ここいらの客はケチだね、財布の口が堅いね」と毒舌を交えて最後は五百円まで下げて、やっと声がかかる。

「売った?持ってけドロボー」