ラジオ訓話

これは今から七~八年ぐらい前に NHK の『ラジオ深夜便』で聞いた話です。どこかの大学教授が生真面目きまじめなトークのなかでこういったのです。

「老人にとって一番大切なことは、キョウイクとキョウヨウです」。バカじゃないの、この学者。今さら年寄りに教育と教養を説いて勉強しろだなんてどんなつもりだヨ。呆れ返って眠気も去り、聞き耳を立てると「つまり、キョウイクは、今日行くところ、キョウヨウは今日用があるかということです」というからこっちはビックリ。「老人が、毎日が日曜日などといって、一日一日をボーッと無為にやり過ごすのが一番いけない。呆けが始まる大元です」だってさ。なるほど、今日行くと今日用か。冗談をからめたうまいおしゃべりだ、と妙に感心したものです。

しかし、考えてみれば、これはあくまで都会のサラリーマン退職後の老人にあてはまるだけのものでしょう。九州の田舎町に住んでいる友だちは、町内会のお世話、菜園作り、釣りと飲み会で、現役時代より忙しいなどといっています。

たしかに、今日行くと用が、病院とデイサービスだけなんて淋しいことですね。ましてや行く所の遠近の違いも解らなくなっては認知症そのものでしょう。かくいう筆者には、遠近だけは解っているつもりです。まず耳や目が遠くなり、小便が近くなったことは確かですから。