バチ当たり

「バチ当たり」のバチは、国語辞典を見ると「罰。神仏が人の悪事をこらしめること」となっています。

野尻君は、体格もよく、高校の水泳部では鳴らしたもんだというのが自慢です。一杯やるときも「以来、泳ぎをずっと続けてきたおかげで、今まで風邪一つ引いたことがない」という健康自慢がはじまります。常備薬は二つだけ。外傷にはメンソレータム、内服には太田胃散、この二つでたいていの病気は治っちゃうよ、とスゴイことを言います。

さらに「家で生ガキ食べたらさ、家族全員が赤痢にかかって感染症の病院に隔離されちゃったんだけど、同じものを食ったオレは何ともなくてよ、ひとり留守番したっけ」などと話します。

それが六十歳になったある日、「モノが食えなくなった」のだそうです。何もノドを通らなくなって三日目、さすがにヤバイと病院へ行ったら、診断は腸閉塞。下剤をかけられて CT スキャンで詳しく調べた結果、とんでもない、大腸に大きな腫瘍があって悪性のガンだった。即手術で摘出してもらい、九死に一生を得たそうです。

健康自慢から一気に重病へ。大反省した野尻君が退院して真っ先にしたのは、部屋に飾っていた色紙をビリビリに破いて捨てたことでした。書かれていた座右の銘は、どこかで聞き覚えた一首の狂歌で、

 わがやまい、わがいのちこそ我ぞ知る 医者のごときに何わかるべき

なるほど、これではバチも当たるでしょうね。