ガマの油

ガマって、わかりますか? 漢字で書くと蝦蟇がま。むずかしい字だけれど、つまりヒキガエルのことです。これが年をとって巨大な化け物になって芝居に出てきたりしますよね。

昔、お祭りの縁日などに「ガマの油売り」というのが出ていました。その口上が面白くて子どもの頃、みんな覚えちゃいました。学校のお勉強は覚えないのにね。

「さあてお立合い。これに取り出しましたるは一匹の大ガマ。そんじょそこらの縁の下に棲んでいるのとはモノが違います。これより北、北は磐梯山のふもと、オンバコという露草を食って育った四六しろくのガマだ。四六・五六はどこで見分ける、前足の指が四本、後ろ足が六本、指を合わせて四六のガマと申します。

さて、捕らえましたるこのガマを、四面しめんに鏡を貼り巡らして下に金網を敷いた箱の中に追い詰めますと、ガマは鏡に映るおのれの醜い姿に驚いて、タラーリタラリと油汗を流す。これを網の下から集めて三七・二十一日の間、柳の若葉でトロリトローリ煮詰めて出来上がりましたのが、この『陣中膏じんちゅうこう』はガマの油。

さて、この薬の効能は、何といっても切り傷、刺し傷の血止めであります。まずここで今、お見せしましょう。抜けば玉散る氷の刃、この刀で指をこう切ると、ドクドク血が出ますが心配ご無用。このガマの油をひと塗りすればたちまちのうちに血が止ま……、あれ!止まらないね。こういうときは、もうひと塗りでピタりと……、あら、止まらない。イタイ、イタイ、お客様の中にお医者さんはおられませんかぁ。」思わず、オチは古典落語になっちゃいました。